2008年5月6日火曜日

杏仁情報

 連休のさなか、オフィス街にある職場に休日出勤しようものなら、まず、昼時、ランチにありつけないことをあらかじめ覚悟しておかなければならないだろ う。だが、わが研究室のある大学は幸運にもオフィスひしめく最寄り駅とは打って変わって、少し奥まったところに閑静な住宅地が控えているおかげで、休日は おそらく地元の住人のためであろう、いつもの店が開いているから有り難い。
 今年度から出講するようになり、しばしば出入りするようになった系列の高等学校の少し先に有名な中華料理店「御田・桃ノ木」がある。料理がとてもおいしいので、近くに行くのをよいことに、最近折に触れ、その店を利用するようになった。
 ただ、定期的にランチを休む店なので、連休のど真ん中の今日、ここに立ち寄ろうというのはささやかな賭である(こんな調子でわたしはしばしばこの店のランチ休業にて準備中の店のドアを叩くという愚を犯してしまっている)。
 平日、ここにランチで立ち寄るときは、後の予定もあるので、いつも手っ取り早く用意してもらえる麺類を注文しているのだが、今日は休日出勤。自分へのご褒美(!?)と多少時間に余裕があるのをいいことに、日替わりセットなるコース料理を頼んでみることにした。松の実の飴掛けのつき出し、前菜二品に、小龍包、メインの干し肉と野菜の炒め物に、お食事としてオイスターソースの煮焼きそば。どの品も思わずうなってしまう料理だったが、最後を飾った杏仁豆腐が何ともおいしかった。
 口どけは柔らかく、なめらかでやさしい。意識して維持しておかなければ舌の上からいまにも溶けおちてしまいそうである。だからといって、ただ漫然と柔らかいのではなく、スプーンですくうときはわずかな弾力がある。まさに、口に含んだときの溶け味が何ともやわらかなのである。甘みはきわめて淡く、ゆっくりにじみ出してくるという感じ。しかも、ほのかで淡い。アクセントとなる表面に浮かぶ小さな赤い実の名前は忘れてしまったが、口の中で破れると果実の酸味が鮮烈に広がる。