2012年2月5日日曜日

無惨な景観、あるいは目障りな電線の混雑(2)

FTTHサービスの多様性を維持したまま、「無惨な景観」を解消するには、どうしたらよいのか。もっとも効果的な方策こそが、先月指摘した光ファイバー回線を複数の事業者で共用すること、つまり、局舎から加入者宅までの回線の開放である。しかし、こんな素朴で単純なことがいま現在できていないのである。
 伝え聞くところによれば、加入者宅の最も近くにある光ファイバー回線は、NTT東西ですら、すべての回線を利用できている訳ではない(現在、9割以上の地域で光ファイバー敷設されているのだが、実際利用されているのはわずか3割程度である)。
 NTT東西はいう。他の事業者と設備を共用すると、投資を回収できなくなり、今後、光ファイバーを敷設するインセンティブが失われてしまう、と。本当だろうか?すでに加入社宅までの光ファイバーは9割がた敷設を終えており、残りの1割はどうしても光ファイバーを敷設しなければいけないわけではあるまい(他に代わりうるブロードバンド・サービスだってあるわけだ)。むしろ、他の事業者と共同してその回線を使えば、他社から接続料を徴収することができ、NTT東西のこれまでの投資を回収することが可能になるのではないか。かえって、従来の設備を効率的に利用することができるはずなのである。
 すでにわが国は、顧客を囲い込み、先行者利益を求めて、設備の敷設を血眼になって行う段階はとっくに終わっている。むしろ、これからは、これらの投資を回収する段階であるといってよい。共用・接続を認め、接続料徴収こそ、設備の効率的利用に寄与することは明らかで、それを認めないのは、障壁を人為的に作り出し、参入の排除を意図したものと言えないだろうか。かつて接続に係る諸々の制度を整えたときの趣旨や議論はどこへ行ってしまったのだろうか。
 近時、景観条例等によって移動体通信サービスの鉄塔やアンテナが新たに建てにくい状況にあるという。しかし、景観面でより多くを考えなければならないのは、むしろ電柱と電線の混雑の方ではないだろうか。
 この議論は、移動体通信サービスにおいても、話は単純で、鉄塔やアンテナを各社ごとではなく、共用すれば、いまのような混雑や景観侵害を最小化できるはずである。なぜ、こんなきわめて単純なことがいつまでたっても常識とならず、何年にもわたり議論が続けられてきているのか。不自然でならない。われわれ消費者は、もっと身の回りにある景観の変化に敏感になった方がよいと思う。(おわり)