今朝、本が届いた。アマゾンからである。たしか、一昨日の深夜に注文したから、もしかしたら注文のタイミングはすでに昨日になっていたかもしれない。だとしたら、翌日に本が届いたことになる。これには全く驚いた。アマゾンが米国で起業し、日本進出を遂げた約十数年前には、こうした状況は全く考えられなかった。
かつては、講義の合間や移動中のちょっとした時間に、よく本屋さんに立ち寄ったものである。それこそ、一日に一度は必ず店頭で新刊書などをチェックしていた。しかし、最近はいささか状況が変化し、休日くらいしか書店に出かけられなくなってしまった。年齢とともに、予定がタイトになり、隙間時間が見出せなくなってしまったからである。
こんな人に、書籍のネット通販はとても重宝である。本との出会いを求めるならば、確かに店頭で眺める魅力も代え難い。だが、物理的に出かけられないのだから、これしかない。次第にネット通販に頼るようになっていく。確かに、はじめは在庫さえあれば「読みたいときにすぐ読める」店頭買いが気持ちの上では優勢だった。ネット通販は、在庫があっても数日待つことも少なくなかった。しかし、今では圧倒的に時間が短縮された。
出版市場が収縮している昨今、一人気を吐くアマゾンだが(書籍小売では日本最大の書店になった)、その勝因は書籍流通の本来的な機能である消費者の注文にきちんと対応していることが大きいと思う。刊行されている全ての書籍を店頭で在庫することは難しい。だから、書籍は本来的に注文で成り立っている流通なのだ。
1980年代後半、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とわが国が自信に満ちあふれていた時期がある。そのとき、出版流通も「ナンバーワン」だと自負していた。確かにそうかもしれない。毎週660万部を発行していた「週刊少年ジャンプ」を発売日までに全国の書店に流通させていた訳だから。
しかし、それが盲点だった。全国に一斉に配送できる流通網は、あくまで雑誌を念頭に置いたもの。注文流通においては必ずしも「ナンバーワン」ではなかったのである。刹那的で移り気な大量流通・大量消費への対応のみで成功を自認し、やや長期にわたる書籍の読者の購買行動への対応は疎かだった。たしかにどちらも消費者の意向といえるかもしれない。しかし、真に大切にすべきはどちらであったのか、その答えは現実という結果が示している。