2011年10月6日木曜日

「ガラケー」と「スマホ」

 毎度のことながら、日本人の略語のセンスには驚きを超えて閉口する。つけ毛や部分かつらを、しばしば「エクステ」と呼び(本来は「ヘアー・エクステンション」である。)、わが国独自の規格と仕様で展開してきたため、高性能でも世界では相手にされなくなってしまった携帯電話のことを「ガラケー」と呼ぶ。最近、急速にユーザー数を増加させている「スマートフォン」に至っては「スマホ」である。
 恥ずかしながら、この「ガラケー」が何のことを言っているのか、最近になって知った。何とも「ガラパゴス」と「ケータイ電話」とを合わせて「ガラパゴス・ケータイ」、略して「ガラケー」なのだそうだ。
 かのダーウィンが進化論の着想を得た南米エクアドルの西方900キロメートルに浮かぶ南太平洋上の島々・ガラパゴス諸島と、携帯電話。奇妙の取り合わせだが、携帯電話をめぐるわが国の状況と独自に進化したイグアナやゾウガメが生息するガラパゴス諸島の様相との類似性に着目した論考・北俊一「日本は本当にケータイ先進国なのかガラパゴス諸島なのか」(野村総合研究所『知的資産創造』2006年11月号)の問題提起にどうも由来しているらしい。
 これまで、わが国の携帯電話端末は、目の肥えた日本人向けに、非常に高度で洗練されたものが開発・販売されてきた、しかし、これらの商品は日本以外では通用しない。そのため、世界における日本製品の占めるウェイトは極めて低い。「洗練され高品質」であるにも関わらずである。
 なぜか。少なくとも、この背景にはいくつかの要因があるという。第二世代と呼ばれる携帯電話の端末規格をPDCという日本独自規格にこだわったため、欧州を中心に展開していたGSMに世界の市場を席巻されてしまったというのが、第一。第三世代携帯においては、第二世代の轍を踏まぬよう、世界標準に対応したものの、世界の需要の主流がいまだ第二世代であることを看過して、日本企業のみが3G対応端末を投入したことが、第二。そして、わが国の場合、携帯電話キャリアを中心とする垂直統合のビジネスモデルがもともと確立されていて、携帯電話端末メーカーは携帯電話キャリアの要求する仕様に応じて端末を開発・生産してきたことが、第三。
 ガラパゴス化を考える場合、規格・仕様・標準といった要素が深く関わっており、また、企業が採用するビジネスモデルが競争を規定しているといえそうだ。

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