いま、澄みわたる冬の空をさえぎるのは、都心にあっては折り重なる高層ビル群。そして、郊外にあっては、街路と並走し、ときに横切る電線たち。試みに、最寄りの電柱を見上げてほしい。
黒いケーブルが複雑に幾重にも交差し、絡みつき、隣の電柱へと架かる。垂直にのびる柱が接近するたびに黒色のワイヤの密集が繰り返される。電柱は、それだけ多くの電線を支えるわけだから、金属製のベルトを何本も巻き付けられ、そこから水平に金属製の腕(かいな)がのびている(腕金と呼ぶらしい)。
街中を歩いていて、わずかに視線を上げるだけで飛び込んでくる「無惨な景観」が、そこここにある。
こうした景観は、ブロードバンド・サービスの普及によって顕著となった。しかし、わが国におけるブロードバンド・サービス普及の立役者であったADSLは、かねてから敷設されていた電話回線を重畳化してサービスを行っていた上、他社にも回線を開放していたので、ここまではひどくならなかった。
にわかに電柱が混み始めたのは、FTTHサービスが一般化してからのようだ。従来からの電話回線敷設の優位性を利用し、FTTHサービスにおいて圧倒的なシェアを占めるNTT東西に加え、電力線を買収しサービスを展開するKDDI、ケーブルテレビを利用しサービスを提供するケーブルテレビ各社が、それぞれに光ファイバー回線を敷設し、電柱を利用するものだから混雑することとなる。
では、「無惨な景観」を解消するにはどうすればよいか。FTTHサービスを提供する会社を絞り込めばよいのか。仮に1社に集約すれば、電柱の混雑はいくらか緩和するかもしれない。しかし、われわれは単一の事業主体が提供するサービスを甘んじて受けなければならなくなる。サービスの多様性を維持したまま、つまり、サービスの競争を維持したまま電柱の混雑を解消するには、光ファイバー回線を複数の事業者で共用することである。ADSLと同様、回線を開放することである。(つづく)
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