総務省やその審議会を構成する有識者も眉をしかめる大手携帯三社による「極端な値引き」と「高額キャッシュバック(現金還元)」。しかし、これまで見てきたとおり、スマートフォン端末と電気通信回線サービスとをセット販売を行っている実態を前提とすれば、独占禁止法で禁止される不当廉売にも、景品表示法で禁止される不当表示・不当景品類にも、当たるというにはやや難がある。
たしかに、一部の乗換えユーザーのみがメリットをうけ、なかなかメリットが受けられない一般ユーザーの不満は当然である。しかも、もともとこの市場において必要とされる競争は、一部ユーザーに利益を供与することによる競争ではない。移動体電気通信サービスそれ自体の料金やそのサービス内容をめぐっておこなわれる競争でなければならないはずだ。
しかし、たとえ「極端な値引き」や「高額キャッシュバック(現金還元)」が望ましくない不当な競争であったとしても、違法とまではいえない以上、(事実はどうかわからないが)事業者間で話合ってこれらの行為を止めたり、今回のように行政指導類似行為を通じて止めさせたりすることは、むしろ独占禁止法で禁止されるカルテルだとの疑いを免れず、許されない。
では、このように、違法とまではいえないまでも、不当な競争を排除し、本来求められるサービス競争を仕向けるには、どうすればよいか。一つの方法は、景品表示法にある公正競争規約の利用である(景品表示法11条)。一種の自主規制であり、これに行政がオーソライズするものだが、当該事業分野における販売方法を行政や消費者の監視下におきつつ、本来望まれる競争を促すための前提がここで整うはずである。活発なサービス競争を促進する競争政策を展開するのは、こうした前提の上で行われるべきであって、まちがっても、対症療法的に、行政指導類似の奇妙な手法で介入をすべきではないのである。