MNP(ナンバーポータビリティ:番号持ち運び制度)を利用し、通信事業者を乗換える顧客だけをターゲットにしたスマートフォン端末の極端な値引きと高額のキャッシュバック(現金還元)……。原資は、通信事業者が販売店に支払うインセンティブ(販促費)である。そして、そのインセンティブ(販促費)の元をたどれば、利用者が通信事業者に毎月支払う料金である。
各社とも通信事業者を乗り換えることなく長く使っている人が、頻繁に乗り換える人の原資を負担するといういびつな構図となっている。(こうしたセールス・キャンペーンに気づいてしまえば、)当然、利用者間で不公平感がつのる。
ちょっと待てよ、これは、どこかで見た光景だ。競合他社から乗換える消費者ヘの過剰な景品類提供……。新聞販売である。ほんの少し前までは、新聞購読の不当勧誘がしばしば消費者問題として上位にランクインしていたものだった。今でこそ、話題にもならなくなったのは、新聞そのものを購読する世帯が大幅に減少したからだ。著作物に対する再販制度のおかげで、どの販売店も決められた同じ価格で販売すればよいし、長期購読者であろうと景品につられて頻繁に購読紙を変える者も同じ価格である。親子三代で同じ新聞を購読していても何のメリットもない。なのに、乗り換えるたびに「おまけ」をもらうのは不公平だとの不満もしばしば耳にした。
また、戸別配達を可能にするという名目の下、販売店の間で地盤割をして顧客獲得競争をしなくてもよい状況を作り出していた。その分、新聞発行本社間で購読料と新聞紙面の質の競争が行わればよいのだが、(新聞発行本社の思惑は別として、)多くの購読者にとっては、ドングリの背比べ。だから、本質な価格や品質で競争が行われず、安易な景品競争に転化する。
いまの移動体通信サービスも新聞も、各社の商品・サービスが差別化されておらず、価格面でも品質面でも同質的な商品・サービスが提供される寡占市場である点が一致している。
電気通信サービスの向かう将来が、新聞のように硬直的な市場のために利用者から愛想を尽かされないことを切に願うばかりである(つづく)。
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