2013年9月12日木曜日

グッド・ガバナンスの好機

 ここ数年、企業法務を専門とするビジネスパーソンや弁護士を中心に合宿を行っている。メンバーもずいぶんと増えて十数人を数えるようになった。先日も、箱根で二日間勉強をしてきた。わたしの専門から、どうしても独占禁止法・競争法が中心だが、必ずしもこれに限らず、ビジネス活動をしている中で問題となっているものはできるだけ取り上げ議論できるようにしている。
 今回は、テーマの一つにプロ・スポーツを取り上げた。プロ・スポーツと独占禁止法とはちょっと不思議な組合せと感じるかもしれないが、実はとても深い関係がある。特に欧米において。ちょうど、旧知の友人にスポーツ・エンターテインメント業界で活躍している弁護士がいたので、彼を紹介しこの研究会で報告してもらうことにした。内容は、プロ・スポーツにおける取引慣行(球団と選手の契約、球団間の協定、球団やその他の組織と企業等々)が、欧米においてどのように取り上げられ、ドラフト制度や保留権、フリーエージェント、ポスティング・システム等々の問題を、独占禁止法・競争法を使ってどのようにこれらの問題を解消してきたかについて説明を受けた。わが国においては、幾度となく改善へ向けた提案が主張され、そのたびに棚上げ、後回しにされてきた問題である。
 これらの問題については、どこかで話をすることもあるかと思うが、今回、一つ、とても印象に残ったことがある。ちょうど、2020年のオリンピック開催が東京に決まったその日、彼が言った一言だ。「イギリスでは、ロンドンオリンピックに向けて、スポーツ団体の改革が大きく進展した。それは、イギリスのスポーツ界に世界的な注目が集まったとき、スポーツ団体の組織運営に問題があったのでは、世界的に恥をさらすことになると皆が考えたからなのだ」。
 わが国も、全柔連の一連の不祥事など、スポーツ団体の問題には事欠かない。このオリンピックを機会に、業界団体の運営の問題に目を背けるのではなく、進んでこの問題に取り組んでほしいものだと思う。わが国は、「恥の文化」であるだけに。